なぜ人間関係が苦しいのか

なぜか分からないけど、どうしても人と上手くやっていけない。何をやっても、相手との距離が埋まらない。どうして人間関係ってこんなに難しくて、苦しいんでしょう。

もしそんな悩みがずっと続いているとしたら、原因はもしかしたら発達性トラウマ障害にあるかもしれません。

私も、発達性トラウマ障害について知れば知るほど、深い部分で何が人間関係に影響を及ぼしているのか、理解できるようになりました。

そこで、発達性トラウマ障害とは何か、それに対して何ができるかを、まとめてみました。少し長いかもしれませんけど、ぜひお付き合いください。

発達性トラウマ障害とは?

以下の情報は、NeuroAffective Relational Model (NARM) を考案した、ローレンス・ヘラー先生の 著書 “Healing Developmental Trauma: How Early Trauma Affects Self Regulation, Self-Image, and the Capacity for Relationship”(邦題:「発達性トラウマ:その癒やしのプロセス -早期トラウマは,自己調整,自己イメージ,および対人関係能力にどのように影響するか」)に基づいています。

ヘラー先生によると、幼少期に次の生理学的能力が育まれないと、発達性トラウマが起きるとしています(参考:http://trauma-japan.com/therapy4)。

From: "Healing Developmental Trauma", Dr. Laurence Heller(図・翻訳:吉田理美)

この5つの能力はなぜ大切なのか。それは、脳や神経系・自己の確立・社会性・適応能力など、人間としての成長に大きく関わるからです。この能力が十分に育たないと心身の発達に悪影響を及ぼすため、「発達性トラウマ障害」と呼ばれるのです。

発達性トラウマの影響

さて、子供のニーズに適宜応対してきた親に育てられた子供は、精神的に安定し、社会に十分適応できる大人に成長します。

けれども、愛情表現が乏しい・鬱気味・神経質、または暴力的・自己中心的・無関心な親に育てられた子供、あるいは性格にそぐわない家庭環境に育った子供はどうでしょうか。

最初は、何が起きているのか理解できません。混乱・圧倒・孤独感・恐れ・不安などの感情に襲われ、子供なりの対処方法を身につけます。だけどトラウマが長期化すると、やがて次のような問題が起きるそうです:

From: "Healing Developmental Trauma", Dr. Laurence Heller(図・翻訳:吉田理美)

このような問題が続くと、やがてアイデンティティーの確立にも影響を及ぼします。こうして出来たアイデンティティーを2つのタイプに分けることができます:恥ベースと奢りベース。

From: "Healing Developmental Trauma", Dr. Laurence Heller(図・翻訳:吉田理美)

身に覚えあるものはありますか?私はありますね…エモーションコード/ボディコード/マップ以前の私には「お荷物」がたくさんあったせいで、子供たちも少なからず影響を受けました。発達性トラウマ障害について知った今、他にできることがまだまだあるなぁ…と認識しています。

アイデンティティーを変えるには

では、発達性トラウマによって出来上がってしまったアイデンティティーを、もっと健康的なアイデンティティーに変えるにはどうすればいいのでしょう。

きっと他にもいいセラピーがあるかもしれませんけど、今知る限り、効果ありそうなのはこちらの2つです:

1)ヘラー先生のNARM™ (Neuro Affective Relational Model; 神経・感情・関係性モデル)
2)Internal Family Systems (IFS) 内的家族システム療法 https://ifs-japan.net/

NARMは、身体・感覚・思考・感情を探ることによって、自分や他人をどう受け止めているかを再確認し、神経パターンを改善させながら、より健全なアイデンティーを築くセラピーです。

IFSは、家族療法士のリチャード・シュワルツ先生が考案した心理療法。「人の心は、複数の副人格(サブパーソナリティー、パーツ)の集合体である」という考えに基づいて、セルフ(自己)とパーツの関係性を見直しながら統合を目指し、成長を促すセラピーです。

パーツについて

パーツについては、こちらの説明が大変参考になります。その他に、故ゲーリー・フリント先生が考案したプロセス・ヒーリング(MAPマップ・メソッドの基盤となっている心理療法)の考えも簡単にご紹介します。

フリント先生によると、パーツはトラウマ時に発生するものです。トラウマとは、自分の中に存在するあらゆる人格・能力を総動員しなければならない未曾有の体験、としています。

トラウマが起きている最中、セルフは押し出され、感情に動かされる原始的なパーツが主導権を握ります。

トラウマが過ぎ去ればセルフは戻ってきますが、パーツはどこかに隠れてしまいます。普段は眠っているけど、似たような体験をすると急にパーツが目覚め、行動を起こします。だから突然「自分らしくない」反応をしてしまうのです。

パーツは、MAPを使ってセルフと統合させることが可能です。パーツを統合すれば、セルフはもっと「まとまった」状態になり、適応能力もアップします。

From: "A Theory and Treatment of Your Personality", Dr. Garry A. Flint(図・翻訳:吉田理美)

まとめ

人間関係は、アイデンティティーと大きく関わっています。アイデンティティーは幼少期の体験に基づいて作られますが、幼い頃につながる・調整する・信頼する・自立する・愛する能力が十分に育たないと、恥ベースまたは奢りベースのアイデンティティーがより強くなります。

そのアイデンティティーをもっと健全なものに変えていくには、NARMもしくはIFSなどの心理療法は大変効果的のようです。その他にMAPメソッドを使ってパーツの統合を目指すことも可能です。

こうして健康的なアイデンティティーが育まれれば、他人だけでなく、自分との関係もより良くなりますし、より健全な自己肯定感も生まれます。

以上ですが、いかがでしょうか。自分または大切な人がなぜ人間関係で苦しんでいるのかを理解するために、少しでもお役に立てば幸いです。

もしご意見・ご感想またはご質問がありましたら、こちらからぜひお気軽にご連絡ください!喜んでお答えいたします。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。